松下vsジャストシステム控訴審判決

松下vsジャストの控訴審で、ジャストの主張が認められたそうだ。今のところ詳細は不明だが、「松下の特許には進歩性がなく、無効事由が存在することが明らかであるため、この特許権に基づく権利行使は権利の濫用であり許されない」ということではないか、と思う。「一太郎のヘルプアイコンは、松下の特許の権利範囲に含まれない」のではなく、「松下の特許権自体が無効である」ということ。ジャスト側がどういう主張をしたのか、判決が公開されるのが楽しみ。id:shiomanekiさんのアレかなぁ。

[追記]
えぇと、前にも書いたかもしれないけれど念のため追記。
民事裁判は、あくまで「どちらの言い分が正しいか」を判断するものであって、裁判所がそのための資料を探してくれるわけではない。だから、今回の知財高裁の判断は、(多分)あくまでジャストシステム側が新たな無効事由を探してきて、裁判官はそれに基づいて「特許は無効である蓋然性がきわめて高い」と判断したのであって、別に「あんなチンケな特許で金を取るのは社会正義に反する」とか、そういう理由でジャストが勝訴したわけではない、と思う。
逆に言えば、今回証拠として提示した無効事由を一審の時に提示できれば、そこでジャストが勝っていた(さらに言えば、特許無効審判請求をして無効審決が出れば、裁判自体がなかった)と思われるわけで、そういう意味では、ジャストは一審の段階ではこの裁判を甘く見ていた、ということかもしれない。

[追記2]
判決文が公開されていた(早っ!!)。これから読みます。

間接侵害の成否についての中で・・・
控訴人製品については,これを専ら個人的ないし家庭的用途に用いる利用者(ユーザー)が少なからぬ割合を占めるとしても,それに限定されるわけではなく,法人など業としてこれをパソコンにインストールして使用する利用者(ユーザー)が存在することは当裁判所に顕著である。」
思わず笑ってしまった。いや、笑うところではないんですけど。

[追記3]
とりあえずざっと読んだ。
ふぅむ、平成16年改正で追加された104条の3「特許権者等の権利行使の制限」かぁ。
第104条の3 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。

えぇと、ヴィッキー・スピルマン=ユージン・ジェイ・ウォング著「HPニューウェイブ環境ヘルプ・ファシリティ」(1989年8月発行)、ほとんどこれ一発で無効化されちゃってるみたいですね。本件発明の出願2ヶ月前ですか、なるほど。
本発明との相違点は『アイコンの機能説明を表示させる機能を実行させる「機能説明表示手段」が,本件第1発明では「アイコン」であるのに対し,乙18発明では,「スクリーン/メニュー・ヘルプ」アイテムである点』であり、『本件特許出願当時,所定の情報処理機能を実行するための手段として「アイコン」は周知の技術事項であり,また,証拠(乙13文献,乙18文献)によれば,同様の手段として「メニューアイテム」も周知の技術事項であったことが認められる。そうであれば,所定の情報処理機能を実行するための手段として,「アイコン」又は「メニューアイテム」のいずれを採用するかは,必要により当業者が適宜選択することのできる技術的な設計事項であるというべきである。』ということで、『当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明に係る本件特許は,特許法29条2項に違反してされたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるというべきである。したがって,特許権者である被控訴人は,同法104条の3第1項に従い,控訴人に対し,本件特許権を行使することができないといわなければならない。』(『 』は判決文より)

で、たぶん判決は確定するでしょう。松下の特許はどうなるかというと、特許自体はこれだけで取り消されることはなく、誰かが審判請求をして取り消しの審決が出ない限り、特許権は適法に存続する。
ただし、松下がこの特許権を行使することは出来ないので、多分年金を払わずに失効させるんでしょうけど・・・