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フィット3(FIT3)のi-DCDについてと坂道問題(大幅修正)

i-DCDの7速ミッションのギア比から、ステップ比を出してみたのだが、1速から2速が2.07で、後は全て約1.35に揃っている。奇数側と偶数側で出力側のギアを共用するので、減速比の設定には制約が多い。2〜7速が等比級数的な設定になっているのは、必然的にそうなってしまうということ。100km/hの時は、7速で1900rpm強、6速で2600rpm、5速で3500rpm程になるようだ。最高速は何速で出るのだろう。6速かな?
1速はモーターの内部に組み込まれた遊星歯車で、ギア配列概念図を見るとエンジンとモーターはサンギアを駆動し、リングギア固定で出力はプラネタリギア(キャリア)から出力し、3速を経由してカウンターシャフトを駆動することになっている。遊星歯車の減速比は、1速と3速のステップ比になり、計算すると2.8になる。遊星歯車の減速比は、プラネタリギアの歯数が「0」の時に2.0で、現実にはある程度の歯数とベアリング径が必要なので、2.8というのは限界に近いのかもしれない。1速と2速がかなり離れているのはそのせいで、この方式を採用する以上仕方のないところ。ちなみに、13GとRSのMTは、1速と2速のステップ比が1.85になっている。

さて、登り坂をゆっくり走る際、概ね20km/h以下ではシフトアップせず、エンジンの回転が高い状態が維持されてうるさい、という現象だが、20km/h時の回転数は、1速で約3500rpm、2速で1700rpm、3速で1300rpm弱になる。回転数から見て、坂道では20km/h程度までは1速で、それを超えると2速に入るように見える。
非常に大雑把な計算、かつ合っているかどうか自信がないけれど、仮に人と荷物を積んで1500kgになったとき、20%の坂で0.2Gの加速をしようとすると、タイヤの半径を0.3mとして、タイヤ軸のトルクは1000Nm強必要になる。
性能曲線図を見ると、「システムトルク」は170Nmでほぼフラット。これを直接入力すると、計算上2速でのタイヤ軸トルクは1650Nmになり、十分に余裕がある。だったら、例えば2速1000rpmになるように、1速で2070rpmになったらシフトアップすればいいじゃん、というふうに見える、かも知れない。
しかし、走行用バッテリーが空であったとしても坂は登らなきゃならないので、エンジンのみのトルクで登れるようにしているはず。1速3500rpmでは、エンジンのみで最大130Nm程度のトルクを発生し、タイヤ軸の回転トルク換算で約2600Nmになるのに対し、1700rpm時のトルクは110Nm程度。タイヤ軸換算で1070Nm程度になり、ぎりぎり。しかも3000rpm以下では、回転が下がるほど発生トルクが減少するような特性になっているので、これより回転を下げると、坂を登れなくなる恐れがある。ということで、1速で3500rpmまで引っ張る設定になっているのだろう。
3000rpm以下のトルクが痩せすぎじゃないか、という疑問があるかもしれないが、ここは通常走行時に多用する領域で、当然燃費を最大限に考慮しなければならない。ということで吸気バルブを一つ止め、スワールを発生させてリーンバーンで回すので、あまりトルクが出せないのだろう。普通に走っている分には、加速時はモーターアシストで補えるし、定常走行時はこのトルクで十分。あくまで登り坂をゆっくり登るときだけの問題ということで、損得勘定をしたうえでの技術選択だと思う。
もちろん、車重や坂の斜度、坂がどの程度続くのかの予測等を行ったうえで、モーターアシストを前提として早めにシフトアップしちゃう、という制御はできるかもしれないが、失敗して電欠になると、坂の途中でいきなりシフトダウンして「爆音」を発することになり、これはこれで叩かれそうではある。根本的な解決としては、1速と2速のステップ比を小さくすることが必要。例えば、1速を3速経由でなく5速経由にすれば可能かも知れない。構造が複雑になり、制御が大変になって、結果的にコストに跳ね返るような気がするけれど。

[追記]
時々、「i-DCD 坂道」とかのワードで検索して、このページを見ている方がいらっしゃるみたいなので追記しておくと、その後のソフトウェア・アップデートで、モーターアシスト前提で上のギアを選ぶようになり、坂道での「爆音」は大幅に低減した。立体駐車場のスロープ程度なら、全く不満も不自然さもないレベルだと思う。きつい登り坂が続く山道を、ゆっくりと登りつづけるシチュエーションでは、電欠になるのでシフトダウンすると思うが、そういう経験がないので頻度等は不明である。