松下vsジャストシステムの件について(その2)

なんだかお怒りの方が多いみたいで、「松下製品不買運動」なんてのもあるようだ。でもねぇ、昨日も書いたように、裁判として表沙汰にならないだけで、特許権の行使は一般に広く行われていることなんだけどなぁ。ライセンス交渉をしていたんだけど、お互いの意見が食い違ってまとまりそうにないので、裁判で決着をつけましょう、というだけのことでしょ?何でこんなに大騒ぎになるのか、と。

MacTechの記事があるから特許は無効なのでは?という意見に対して

http://d.hatena.ne.jp/shiomaneki/20050203

松下の特許が出願された平成元年当時の特許法では、「特許出願前に日本国内において公然知られた発明でないこと」が新規性・進歩性の基準になっていたと思う。 MacTechの当該記事が、国内で公知(国内の雑誌に翻訳記事が掲載されたとか)であったなら、無効化のための資料として使えると思うのだが。ちなみに現在では、日本国内のほかに、海外で公然知られた発明、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明も無効化資料となり得る。
裁判では、ジャストはMacには言及せず、ゼロックスの(MacのUIの原型になった)STARワークステーションの資料を根拠にして無効事由の存在を証明しようとしたようだ。

追記と訂正

id:shiomanekiさんのコメント欄に書き込んだら、ご本人から文献公知については当時から世界主義だったと教えていただいた。
http://homepage3.nifty.com/matsumura-lo/Hanrei/comment/30maltiwindow.htm
うぅ、すいません。うろ憶えの記憶に頼って書く危険性を痛感。

ひょっとして、みんな「特許」と「裁判」に対して幻想を持ちすぎ??

「あんなのが特許なの?」という疑問に対しては、「特許というのはそういうものだ」というしかない。昨日も書いたように、あの松下の特許はかなり良い発明だと思う。id:shiomanekiさんが言われるように無効事由が存在するのならともかく、そうでないなら、当然特許になってしかるべきでしょう。
そもそも、発明が重要なものであるか否かを、だれがどうやって判断するのだろうか? 特許庁は(自然法則を利用していないものや、産業に利用できないもの、公の秩序、善良の風俗または公衆の衛生を害する恐れがある発明以外は)「くだらない発明だから特許にしません」などという判断は出来ないし。
ワープロに関する特許だから、PCのソフトウェアに対して権利行使するのはおかしい、というのも変だ。件の発明は「情報処理装置及び情報処理方法」に係る特許で、産業上の利用分野として「本発明は、日本語DTPワープロ等の機能説明を行う情報処理装置に関するものである」となっている。「一太郎」や「花子」をインストールし、件のヘルプ機能を有するPCが「日本語DTPワープロ等の機能説明を行う情報処理装置」に該当することは明らかだろう。

裁判に関して言えば、民事訴訟は「当事者の紛争解決のための手段」であって、原告と被告が提出した証拠を調べてどちらが正しいかを判断するだけのもの。裁判所自身が新たな証拠を探してくることはないから、仮に真実が他にあるとしても、当事者が陳述したこと以外は考慮されない。(たとえば)MacTechの記事があるから当該特許に無効事由が存在することは明らかである、といくら外野が言っても、ジャストがそれを証拠として提出しないことには裁判には無関係である。しかも、ジャストを「有罪」なんて書いている人がいたりして、刑事と民事もごっちゃになっているし、まるでジャストが罪人と決め付けられたみたいに思っている人もいるみたいだし。まぁそういうメンタリティの人が多いから、「訴えるぞ!」というのが一般に脅し文句として効果をもつのだろうが。

あと、「何故ジャストを狙い撃ちしたのか」という非難も目につくが、要するに「取れるところから取る」ということでしょう。包括的クロスライセンスを結んでいる企業からは取れないし、あまり小さいところだとつぶれちゃうかも知れないし。あと、この特許にライセンス料を支払っているところもあるんじゃないかと思う。で、ジャストが支払いを拒否したということが知れると他に対する権利行使にも影響するので、裁判できっちり決着をつける、と。