特許権について

http://soulwarden.exblog.jp/3069748
詳細に検討したわけではないので、リンク先の案件がどうなのかわからないが、一般論として特許というのはなかなか権利行使が難しいものだ。
特許されても権利範囲が確定するわけではない。特許公報の請求項だけを読んだのではわからないが、審査時に見過ごされた類似の先行技術が発見されることも少なくないし、権利化されるまでに審査、審判などで主張した内容に拘束される(包袋禁反言)。上記のリンク先から辿れるところに書かれている特許(特許査定になっていないものを含めて12件の記載があるが、そのうち一番上のもの)にしても、特許成立後に異議申立を受けて、先願との差異を出すために請求項を訂正(減縮)しており、現状ではそれほど強い(回避困難な)特許ではないように見える。
また、出願時に発明者が考えていた範囲から外れるものに対してまで権利主張が認められるとは限らない。例えば、1985年出願の発明の請求項に「外部からのデータ入力」と書いてあり、実施例として「フロッピーディスクからのデータ入力」のみが記載されていたとして、「インターネット経由のデータ入力も権利範囲に含まれる」と主張出来るかというと、それは検討しないとなんともいえない。
上記の例で、インターネット経由のデータ入力を用いた方法を実施している企業が権利者から権利侵害で訴えられたとすると、訴えられたほうは「データ入力の方法として、当該特許の明細書にはフロッピーディスクによるものしか記載がなく、インターネット経由のデータ入力を示唆する記述はない。また1985年当時、インターネット経由のデータ入力は当業者において自明の技術常識であったとはいえない」とかなんとか主張するわけで、そう主張された権利者側は、明細書中にインターネット経由のデータ入力について記載がない以上、当時の文献などを証拠として提出し、「1985年当時にインターネット経由のデータ入力が当業者にとって技術常識であり、当該発明においてフロッピーによる入力と置換容易である」旨の証明をしなければならないわけだ。まぁ裁判しない限りは当事者間の交渉で決まるのだから、上記のようなケースでライセンス料を支払う場合も多いのでしょうが。
特許公報を読む人は現在の技術水準を念頭に置いて読むわけだから、「外部からデータを入力」と言われると当然インターネット経由も含まれると思ってしまうし、逆に「こんな技術当たり前じゃん。何でこんなのが特許なの?」などと思ってしまう場合もある。昨年の松下vsジャストの時もそういう反応が多かったなぁ。